昨日のこちらの記事の反響に驚いております・・・
たくさんの皆さんからのご意見が聞けて非常に参考になっております。
日本の選手が考えがちな「練習を休むと下手になる」は本当なのか? https://t.co/FzzW97gHVe pic.twitter.com/t428lZVKBq
— 奥村正樹(スポーツトレーナー/physiotherapist) (@Masa19901) 2019年1月24日
今回はそれとほぼ同じ内容ですが、過去に別のブログで投稿したものを手直しを加えて再度投稿させてもらいます。
皆さんの中にも、現在痛み止めを飲みながら部活、スポーツを続けている人もいらっしゃると思います。
最近のツイッターでも、「○○が痛いのに痛み止めを飲みながらやっています。どうしたらいいでしょうか?」のような問い合わせが結構来ましたので、今回はそれに対する私なりの意見をお伝えしたいと思います。
私は、トレーナーの勉強を始めた学生時代からサッカーや様々なスポーツの現場に関わりはじめて約10年が経とうとしています。
スポーツをしているとどうしてもケガや障害などが起こってしまいます。
私は、トレーナーとしてケガの予防を最も重要な課題の一つ(特に育成年代では)として活動しているのですが、最も難しい課題の1つになります。
そのなかで、サッカーの現場にいて最も気になる、違和感を感じることが、
「プレーをするために、すぐに(とても気軽に)痛み止めを要求してくることです。」

まず、「痛み」が私達の身体にどのような働きをしているかについて簡単に解説すると、
私たちは「痛み」を感じることで、身体に何らかの異常や異変が起きていることに気づきます。
もし、「痛い」という感覚がなかったら、危険を察知したり、回避することができず、ケガや病気を繰り返したり、命の危険につながることもあります。
「痛み」は、体温、呼吸、脈拍(心拍)、血圧と並んで、私たちが生きていることを示す“サイン(バイタルサイン)”ともいわれ、私たちの身体や命を守る、生命活動に欠かせない役割を持ちます。
私達を惑わす、悪魔のフレーズ
「痛くなくなったらやっていいよ!!」
この一言が、育成年代の選手に非常に大きな影響を与えているように感じています。
病院に行ってお医者さんにこのように言われたら、育成年代の子どもたち、親御さんの頭のなかに、痛くない=治った→プレーしていい!!という流れが当たり前のようにできてしまいますよね。
もちろん、打撲や軽い捻挫のような急性の外傷などであれば痛みがなくなれば問題なくプレーできます。
ですが、障害(野球肘、シンスプリント、オスグッド、グロインペインなど)と呼ばれるケガに対して同様の考えが通用するのでしょうか?
障害とは、スポーツによって繰り返し過度の負担が積み重なり、痛みを主とした慢性的に症状が続くものをいいます。
これらの症状は、練習のしすぎによって身体が限界を感じ、「痛み」として警告を出した(オーバートレーニング)、または誤った使い方が原因で、ある特定の部分に負担がかかりすぎてしまって痛みがでます。
つまり、原因となっている、練習のしすぎをきちんとセーブして休む、間違った身体の使い方を改善しない限り、痛みを取っただけではまた再発を繰り返し、治ったことにはならないのです。
病院に行くと、お医者さんが簡単に痛み止めを処方していることも大きく影響していると思います。
私自身も整形外科に勤めたことがありますが、痛み止めのような鎮痛剤しか処方してくれないところが多すぎるのも問題だと思います、、、
病院(整形外科)の場合で、その患部(痛いところ)を治療してくれる時=傷などの創傷治療、そして骨折のときの整復もしくは手術によるときくらいしかないように感じます。
痛み止めによるデメリットとは??
痛み止めの使用方法に問題があるということを認識する必要があります。使い続けることで、
①痛みが楽になったと錯覚してムリに競技を続ける。(痛みがない=治ったという考え)
②何度も服用するとその薬効力が弱くなる。(たくさん飲まないと効かなくなる)
③何度も服用すると軟部組織などが弱くなる。
④からだの持つ治癒能力を低下させる。
⑤消化器官に悪影響を及ぼしやすい。
上記のようなことが起こると言われています。皆さんの中にも心当たりがあるのではないでしょうか?
また、
「NSAIDsはその抗炎症作用によって骨の治癒を遅らせ、たんぱく質合成を減少させる。そのうえ、運動後には骨格筋の衛星細胞(の活性を)を阻害する」と言われています。
衛星細胞というのは、筋肉のもとになり、筋肉の修復に必須であることが分かっている細胞です。つまり、アスリートにとって「いいことは何もない」わけです。

痛み止めを服用しながらのプレーに関してはトッププロのレベルでも同様のようです。
FIFAワールドカップ(W杯)の02年から14年の4大会(日本・韓国、ドイツ、南アフリカ、ブラジル)で、参加各チームのプロサッカー選手の総計1000人以上の薬の使用量をまとめたものです。02年大会以降、FIFAは国際試合での薬の使用量をチェックしており、各チームのチームドクターは、試合の72時間前に全選手に処方されている薬の情報を報告するよう求められています。
その結果、成人男子選手の69%が非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用していたことが分かりました。
http://bjsm.bmj.com/content/49/9/580
(論文参照元)
彼らプロの選手はサッカーをすることでお金を稼いでいる人達ですので、時と場合によっては服用しながらプレーも止む終えない場合もあります。
ですが、日本の場合は、育成年代でも気軽に薬を要求してくる、飲みながらプレーをしているところは異常ではないかと感じています。
日本の育成年代は、選手一人一人を育てるよりも、チームとして結果を出すことが強く求められているのが現状だと思います。
ですので、レギュラーで出ている選手は、なんとしても試合に出続けることが強く求められます。
監督やコーチも、主力の選手がいないのは結果に大きく影響してきますので、私も、「なんとかして試合に出れないか?間に合いそうか?」のようにプレッシャーをかけられたことはあります。

ですが、ヨーロッパでは考え方が違いました。
例えば、才能のある15才の選手が腰痛に悩まされていたとします。
その場合、プロの卵である、彼らをすでに「プロ」と同様の扱いをしているように感じました。
ですので、きちんとドクターが診察し、トレーナーが付き、リハビリメニューを計画・実施し、ドクターが再検査し、復帰のゴーサインがでるようになっていました。
彼らは、将来トップチームで活躍できる選手を育てることが使命ですので、今無理をさせて将来有望の選手を潰すのではなく、将来きちんと活躍できるように無理をさせていませんでした。
この違いが、遅咲きの選手が出てくる理由の1つかもしれませんね。
まずは、きちんと徹底的に休ませる。(日本はこの部分に対する考えが非常に薄い、欠けています。)
休んで痛みが取れたら、必要なリハビリ、新たな身体の使い方を身につけるプログラムを実行する。
そして、きちんとチェックをして復帰をする。これが復帰までの理想的な流れだと私は思っています。
私自身の意見としては、
痛み止めを服用しながらのプレーに関しては反対です。
特に、育成年代で痛み止めを飲みながらのプレーすることについては断固反対ですし、痛み止めを飲みながらプレーを続ける意味が全く見出せません。
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